それは痛恨ではなく…(サッカーダイジェスト 2007年11月13日号)

【J2第48節】
ザスパ草津 2 - 2 東京ヴェルディ1969

先制点で狂ったリズム

第3クールからの追い上げで首位に肉迫してきた東京Vの連勝が、ついに8でストップした。その相手が前回対戦で蹴散らした11位の草津とあれば、連想されるのは「よもやのドロー劇」となるのだろう。だが、実際には勝点1を拾えたことを評価すべき非常に苦しい戦いだった。「負けなくて良かった」(ラモス監督)というコメントに込められているのは、決して慰めの気持ちばかりではないはずだ。

勝ち続けてきたチームのリズムを最初に崩したのは、9分に決まった草津・カレカのゴール。ここ数節の東京Vは、チームとして無理することなくフッキとディエゴに仕掛けさせ、早い時間帯の先制に成功してきた。ドリブルを多用し好位置でのFKを手に入れゴールを陥れる、というのがパターンだ。また先制することで、相手が引き出され、その後のカウンターがより効果的なものになっていたのだ。


ひとつのパターンが崩れたことで、相手がセットアップした状態へ攻撃を仕掛けざるを得なくなる。頼みのセットプレーも多くは得られず、この時間帯には前掛かりになったところを鋭いカウンターで突かれる危険なシーンも生まれている。しかし、東京Vが本当に苦しめられるのはその先のことだった。

26分、とことんフッキを使ったゴリゴリの攻撃でなんとか同点とすると、ゲーム展開が再度大きく変化。再び攻撃的にシフトした草津が、強気につなぐサッカーを続け、ますますパフォーマンスを上げていく。相手に攻めさせておいて鋭いカウンター、といういつものパターンに持ち込めるはずの東京Vにとって、草津の姿勢はむしろ好都合。にもかかわらず、そのカウンターが出ないのだ。

草津は守備への切り替えを早くするだけでなく、DFラインの前に秋葉、松下、櫻田の3ボランチを並べ、ディエゴとフッキの関係性を遮断。リーグ最強のコンビネーションが光る瞬間は、71分のゴールシーンを除けば、ゲームを通じてほとんど生まれなかった。素早いアタックが決まらない東京Vは、堪らずボールを奪いに出て行く。しかし今度は、相手を食いつかせて逆サイドへ展開する草津の狙いにはめられてしまった。ロスタイムのゴールを含め、草津が終盤に仕掛けた猛攻は、多くがこの形からだった。

2―2となった後、さらに攻めた草津は寺田のクロスに佐藤正が合わせて決定的なチャンスを作る。しかし、バーを叩いたあの1本が無かったとしても、90分を通して分があったのはホームチームだった。

11位に沈むチームに引き分け。東京Vにとって、その事実だけを見れば重大事となるが、草津の策略とそれをやり抜いた選手たちのパフォーマンスが素晴らしかったことは間違いなく、東京Vが悪いなりに結果を残したゲームと言って差し支えないだろう。残り3戦。手堅い守備と前線のタレントを生かしたこれまでどおりの戦いを続ければ、結果はおのずとついてくるはずだ。

■布陣&採点表(サカダイ・サカマガ・エルゴラ3誌の平均)

________________フッキ________________
_______________(6.5)_______________
______________ディエゴ______________
_______________(6.16)_______________
広山_______________________シウバ
(5.83)________________________(5.66)
_________菅原______大野________
_________(6.0)_______(5.83)_________
服部____戸川____土屋____海本
(6.16)___(5.66)___(5.83)____(5.83)
________________高木________________
________________(5.83)______________

●交代:70分 広山→飯尾(5.83)

▼SUB:GK 吉原 DF 富澤、福田 MF 柴崎晃

<試合概要>
先制したのは草津。9分、最初のチャンスとなったCKにカレカがダイビングヘッドでゴール。8試合ぶりに先制を許す展開になった東京Vも反撃するが、人数をかけた粘り強い守備で対応する草津もしのぐ。
しかし26分、スローインを受けたフッキが、相手3人に囲まれながらもゴール。試合を振り出しに戻す。

62分、右サイドのクロスを高田がダイレクトボレー。高木が弾いたこぼれ球を櫻田がつめるも、ボールはバーを越えて得点ならず。71分、エリア付近でフッキとディエゴがしかけ、最後はフッキが流し込み東京Vが逆転に成功する。

しかし。ロスタイム、秋葉からのクロスに高田が飛び込み、草津が同点に持ち込む。そしてタイムアップ。

☆Man of the Match☆(ELGOLAZO選出)
FW 9 高田保則草津
1点リードされて迎えたロスタイム。左からピンポイントで上がってきたクロスボールに、本人にしか見えないわずかなスペースを見つけ、豪快にダイビングヘッド。劇的過ぎる同点弾で、東京Vの連勝をついに止めた。