7月18日付、東京新聞の記事

時速45キロ、多田野投手の『重力ボール』を解剖東京新聞
↑リンク先ですが、本文が無いので、ぱちぽち自分で打ち込んでみました。

■天井サーブ?1.5秒の放物線
6月18日、広島市民球場。5回、多田野投手が広島カープシーボル選手に投じた球は、手から離れると、ふわっと浮いた。目撃した東京中日スポーツの土屋善文記者が振り返る。
「投げた瞬間、何が起きたのか、と球場全体が静まり返った。次の瞬間、歓声と爆笑に包まれた。打者の手元に到達するまで、まだ一呼吸あった。」
バレーボールの天井サーブのような山なり。滞空時間は約1.5秒。計算すれば、時速45キロ程度。国内初見参の球の軌道は、球速測定の範囲から外れ、正確な速度は不明といわれている。シーボル選手はショートゴロに打ち取られた。
国内の公式戦で投げたのは2球。いずれも外国人選手にカウント2-1から投じ、相手のバットを封じた。投げた時の心理は、いかに。
「特色ある球種を一つ増やしたかった。直球と同じような腕の振りで、緩急をつけようと思った」と多田野投手。渡米一年目以降、何度も投げているという。もともと立教大学時代に登板が多く、抜いた球を投げるようになり、それが米国での強打者対策で超遅球に進化したといわれている。
「誰も教えてくれないから自分で考えた。当然、練習しています。サインもあります」と制球していることを示した。「ただのボール」などと呼ばれているが「名前は付けていません」。



■「当然リスクありますが」
強振しがちな打者に投げることが多いという。打たれる心配はないのか。
「当然リスクはありますが、他の球種でも、打たれないとも限らないですから。打者の目線を見て判断するし、試合の雰囲気を変えたいときなどに投げます」と、メジャー仕込みの度胸を見せた。
28歳のルーキーは150キロ超の速球、キレのあるスライダー、フォークなど球種が多彩。
一月の自主トレ中に左手首を骨折して完治しておらず、今の球速は140キロ台前半。それでもダルビッシュ有投手らとともに先発の一翼を担う。球の握り方を見せて、と頼むと「いいですけど、ストレートと同じですよ」。本当に直球の握り方だった。




科学的に解剖してみよう。理化学研究所の姫野龍太郎・情報基盤センター長の計算で、マウンドから1メートル手前で球を45度上に投げた場合、空気抵抗を無視すると、時速48.5キロが遅さの限界。それ以下の速度では重力に負けてホームベースまで届かないという。多田野投手は重力と速度の限界すれすれを突いていることになる。
さらに、打ちづらさも強みだ。打者は基本的にバットをほぼ水平に振る。斜め上から落ちてくる球に対しては「球が当たる点が一つしかなく、当てるのが難しい」と姫野氏。
「バットを振り上げれば当てやすいが、予想外の球に戸惑い、タイミングを取りづらいはず。打者に見慣れた軌道ではないだけに、たまに投げるのなら有効ではないか」と太鼓判を押す。
ただし、リスクもある。姫野氏の分析では、遅い球は当たった瞬間、バットを押し戻す力が弱い。多田野投手の超遅球がジャストミートされると、速い球のときより遠くに運ばれてしまうという。「でも、プロの打者が遅い球を見れば、思い切り振ろうと思わず力み、結果的に凡打になってしまう。多田野投手もそれを狙っているのだろう」



ここで、何故か輪島さんが出てきます。

■輪島氏「自信ないとできない」
「打者は「ばかにしやがって」と怒る。でもストライクになるから、打者は無視できない。喝采しています」とボクシングの輪島功一氏。グッとしゃがんだ後にパンチを食らわす「かえる跳び」で脚光を浴びた元世界王者が、心理面の巧みさを語った。
かえる跳びは、リーチの短さを克服した、とっさの技。左フックは相手の胸板をずるずる上がり、あごにヒット。相手は「ばかにするな」と怒った。輪島氏は試合のペースをつかみ、世界王者に。
輪島氏は相手の特徴や心理を読み、自身の不利を覆してきた。「かえる跳びで、しゃがんた時に上からポカツとやられたら、おしまい。それでも駆け引きのために勇気を出した。自信がないと、できない」


さて、多田野投手自身は名前をつけていない球に、名前をつけたい。熱狂的な日ハムファンのコラムニスト、えのきどいちろう氏は、「ナイアガラ大瀑布ボール、略して『ナイアガラ』では?」多田野投手が鍛錬を積んだ米国と、カナダの国境にあるのがナイアガラの滝。花火の名前のようでもあるが、涼しそうで夏はいいかも。えのきど氏は前出の広島戦を球場で観戦していた。「シーボル選手は『ふざけるな!』と言わんばかりにフルスイング。完全に体勢は崩れ、見事に打ち取られた。また見たい」とニンマリ。




ドカベンでは「ハエどまり」
似た球は野球マンガドカベン」(水島新司作)にも登場している。投げたのは、主人公・山田太郎のライバル、不知火守。ハエが止まる遅さから魔球「ハエどまり」と名づけられた。ただし、球速は60キロ程度で、多田野投手よりは少し速い。
さて、「こちら特報部」も名づけて「重力ボール」。重力に負けるすれすれの遅さだから。このほか省エネだから「魔球・洞爺湖」、「パラシュートボール」「垂直ボール」なんて案もあるが、多田野投手、いかが?

魔球・洞爺湖、時事ネタすぎて笑いました。今月限定じゃん!みたいな。えっと、童夢くんの「スノーミラージュボール」なんていかがでしょうか。あの、すごいナックル→球がドカーンと浮く→打者には消える魔球に見える→ベース手前で落ちてきてストライク、みたいな。一部メディアでは消える魔球とも書かれてましたし!